ゼンマイで動くお人形さんのファンタジー小説を書きました。

果たしてここで宣伝して読んでくださる方が出てくるのか謎ではありますが、ないよりはいいだろうということで書いておきます。

 ゼンマイで動く機械人形「オートマトン」を扱うお店の店主が、人間と人形の違いにもだもだ苦しんだりするお話です。メイド人形さんが出たり出なかったり。以下に冒頭を載せておきますね。今日の17時まで無料でダウンロードできるんですが、無料頒布デーはあと4日分残っているので折を見てまた設定したいです。読ませろー!という方がいらっしゃいましたら連絡ください。設定します。レビューとか……書いてくださったらうれしいです……

kindleアプリをダウンロードすれば専用端末がなくともお読みいただけます。kindle unlimitedにも登録しております。よろしくお願いいたします~。

香匣は心臓を望む

香匣は心臓を望む

 

好きな台詞まとめたよ。

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以下本文サンプル。

 

 

 香匣は心臓を望む

   宮丹桂

 

 いやなコール音だった。暁人・クリンプは、その電話を取るのがしばし遅れた。それは真夜中に鳴る電話と似ていたし、じっさいその通りだった。たった数コールのためらいは暁人の良心を痛めるには充分で、受話器を取るや否や彼は「レテか?」とせめてもの償いのように、その一言をしぼりだした。
 案外早かった、と思ってしまう自身は確かに存在していた。おどろきよりも腑に落ちるような、ようやく縫い物を終わらせたような、そんな感覚だった。彼は受話器を耳に押し当てて、壁に頭を押しつけるようにしてその声を聞いていた。
「分かった、すぐ迎えに行く。すぐ行くから、部屋から出るなよ、頼むから、いいな、ぜったいだぞ」
 と彼は念を押して電話を切った。受話器がもとの場所に戻ったことを確認して、いまいましく舌打ちをする。眼鏡をかけたままだったが、両手で顔を覆い隠しその場にずるずるとしゃがみ込んだ。「めんどくせえ」と泣き出しそうな声を出し、電話台にごつん、と頭を打ち付ける。
 電話台は階段のすぐ手前に置いてあった。一番下の階に腰をかけて暁人は膝に顔をうずめる。泣いているのか、うめいているのかどちらともつかない声がそこから漏れてくる。
 太陽はもうじき一番高いところへたどり着く頃合いだった。しかし彼の丸まった背中はぼんやりとした頼りない光に照らされるばかりで、店内はうすぐらい。階段の上には、両側にふたつの硝子ケースが壁にそって入り口近くにまでのびている。片方の硝子ケースには、時計用にしては大きすぎるゼンマイの巻き鍵がところ狭しと並んでいた。巻き鍵の羽根は意匠がひとつとして同じものがなく、穴が対称に空いているものもあれば、凝った装飾をほどこされているものもありさまざまだった。もう片方には自転車のペダルのような、軸とそれを回すためのノブがついたクランクキーが並んでいる。巻き鍵に比べれば数はすくないが、上段には取り外されたノブ部分だけが上向きにいくつも置いてあった。
 せめて店内が覗きやすいようにと作られたショーウィンドウには、ひとりの女性が椅子に座ってうたたねをしている、ように見える。じっと見つめていればそれが呼吸などしていないことに気づくだろうが、それでもふんだんにあしらわれたレース帽子のなかから覗く、ふっくらとした頬は赤みを帯びていてやわらかそうだったし、伏せられた長い睫毛ののびる目蓋は、いまにもぱちりと開かれそうだった。人間と見まがうほどのその等身大の人形はひとつだけではなく、ウィンドウの手前にも二体、椅子に座っていた。同様に女性の型をしたものがひとつ、もう一方は他の二体よりも大きく、男性型の人形だった。
 それらが暁人の扱う商品だった。どこまでも緻密につくられたそれとひととの違いを見つけることは酷くむずかしい。ひとたび動き出せばよけいに人間なのか人形なのか分からなくなる。それはゼンマイによって動いた。時計のようにゼンマイで動くその人形たちは、オートマトンという名で知られていた。
 そのオートマトン店の店主は、店のまんなかでうなだれている。慣れていない客が足を滑らせて悲鳴をあげる階段に、腰を掛けたまま動かない。頭のなかでは電話の会話を反芻していた。「薫さんが朝から動かないんです」というレテの言葉が、ぐわんぐわんと頭のなかで響いていた。水谷薫というのがレテを買った顧客だった。死ぬのならばせめて病院のベッドで死んでほしかったが、昨晩はきちんとレテのゼンマイを巻いてくれたらしい。それに関しては感謝しなくてはならないのかもしれない。いずれにせよ水谷氏は死んだようだ。ああめんどくさい、と彼はもう一度言って体を思い切りのけぞらせる。階段の縁が背中にあたって痛かった。
「どうかしましたか、暁人?」
 機械音の混じる声だった。それは店の奥から聞こえてきたようだった。ひびの入った古いソファの向かいには、少年のような、少女のような形をした人形が座っている。動き始めのオートマトンほど気味の悪いものはない。首だけがなめらかに動き暁人をとらえた。見開かれた瞳に見つめられると背中に冷たいものが走る。
 暁人は階段にのけぞったまま「質問をするときは首を曲げるとそれっぽいぞ。やりすぎはしつこいが……ああ、あと目が開きっぱなしで怖い。もうすこしまぶたの力が抜けるといいんだけどなあ」と言った。その声音はいささかうんざりしていた。
「では、どうかしましたか?」とそれは首を傾げ、たしょう瞳をまぶたで隠しながらふたたび言った。口元を言葉に合わせて動かすようにはなってきたが、まだ開閉する程度の動きしかできていなかった。発声器から音を出しているだけで、人間のように口のなかで音を作っているわけではないから会話すること自体に支障はないが、この人形が人間のように動くようになるのだから不思議なものだ。
 彼はあきらめたように立ち上がると、電話が鳴る前と同じようにそれの向かいに座る。階段よりは座り心地がよかった。しかしコール音が響く前までのように、人形の相手を続けているわけにもいかなかない。客だった死体のそばで、自身の商品が途方に暮れているのを放ってはおけなかった。人間死んでしまえばおしまいだ、迷惑だ、と暁人はうまく回らない頭で考えていた。こいつになんと言うべきだろう。大事なことだ。まだ動き始めて間もないのに。
 それは言われたとおり首を傾げたまま止まり暁人の言葉を待っていた。お前の兄、あるいは姉、あるいは先輩に当たるオートマトンのご主人が、つい今しがた亡くなったそうなのでこれから確認しにいくよ、とはさすがに言いづらく、そして理解できるとも思えなかった。それの分かる範疇で言葉を探しだすことはむずかしく、戸棚から捜し物をしていた女性が彼に救いの手を差しのべたとき、彼女が思う以上に彼は安堵した。
「わたしが相手をしておきましょうか」
 と彼女は言った。その声にもまた機械音が混じってはいたが、目の前の人形よりは小さかった。黒いワンピースにエプロンドレスをまとった彼女は、戸棚に押し込まれたファイルを引っ張り出して中身を確認している。彼女は女性型のオートマトンで、暁人は彼女を桃と呼んでいた。暁人はうめくように言った。
「いま頼もうと思ってた」
「それは失礼しました」
 お目当てのものが見つかったのか、桃はファイルをめくっていた手を止める。「ミスタ・水谷の連絡先は、息子さんのようですね。掛けていきますか?」
「いやいいよ、ただ寝てるだけだったら申し訳ないし」そうだとしたらきっと腹を抱えて転げまわるにちがいない。桃から水谷氏と結んだレテの契約書を受け取り、暁人は笑った。彼女は応えなかった。
「怒ってる?」
「いいえ、まったく」
 ほんとかなあと暁人は桃を見上げるが、彼女はふいと顔を逸らす。彼はそれ以上掛ける言葉も見つからず、水谷氏の住所を確認した。「あ、アパート暮らしか。じゃあ連絡とかは俺たちの仕事じゃないな」
「契約者死亡時のレテの扱いは大丈夫ですか?」
「店に返却だからへーきへーき」
 そうですか、と桃は頷いて、店の奥の階段から二階へ上がっていった。暁人は首を曲げて動かない人形に向き直る。
「マリウス。質問が終わったら首はもとに戻していいよ」
「わかりました」と、彼、あるいは彼女、あるいはそれは言った。どれを使うのが適当なのか、暁人はまだ分かっていなかった。男の顔をしていれば彼だろうか、女の恰好をしていれば彼女だろうか、それと言うにはあまりに人間に似ていて、暁人は答えをあとにのばしている。暁人はマリウスの前で膝を折りその手を取った。人間の手にしては冷たいが、機械の手にしてはあたたかい。人工的に造られたなめらかな皮膚をなで暁人は言った。
「申し訳ないけど、しばらく授業は休憩だ。桃はなかなか口下手だから退屈かもしれないけど、ちょっと待っててくれな」
 マリウスは微笑みをうかべたままなにも反応しなかった。「口下手だから退屈」というところに引っかかっているのか動きを止める。仕方ない、まだ動き始めて三日だ。生まれたての赤子を放っておく者がいるだろうか。しかしオートマトンは放っておいたところで死にはしないのだ。こんな大事なときに、と暁人はマリウスの手をなでて思う。
「口下手ですみませんね」
 桃は腕にコートを掛けて戻ってきた。いささか乱暴に広げられたコートに腕を通しながら「むしろ褒めてるのに」と暁人は言った。「もっと他のところがあるでしょう」と彼女は裾についた埃を払うようにして彼の足を叩く。だいたいこういったときにどんな褒め言葉を並べてみても彼女は満足しないのだ。襟元を直す桃を見ていると「お前のゼンマイが切れたら立ち直れないだろうなあ」とうかつにも口走っていた。
 仕上げにコートの左右の襟を引っ張っていた桃は、思い切りそれをぐいと引き寄せた。
 がん、と桃の額が暁人のそれにぶつかり、よい音を立てる。衝撃に暁人が目を白黒させ、あまりの痛みに額を押さえようにも、桃は離そうとしなかった。オートマトンは表面こそ人間の肌に近く作られてはいたが、やはり強く押せばその下に堅い金属板があることは分かる。桃はそれを感じさせるようにぐりぐりと押し付け、機械音を強調した声で低く囁いた。
「いいから早くレテを迎えにいってあげてください」
 コートがみしみしと嫌な音を立てるが、引きちぎる前に桃はその手を離す。じんじんとした痛みをなんとかやり過ごしながら、暁人は「イエス、イエス」と震える声で答えた。
「くれぐれも焦って事故など起こしませんように」と桃は額についた油をハンカチでぬぐって言う。手入れは大事なことだ、と暁人は自身に言い聞かせ、誤魔化すようにマリウスの頭をぐしゃぐしゃとなでる。逃げだすように大股で出ていこうとするが、暁人はドアをすこしばかり開けてから、名残惜しそうに振り向いた。〈霜降〉と呼ばれたこの街は雪こそあまり降らないが、夏が終わればすぐに寒い時期がやってくるのだった。秋の暮れの冷気が開けたドアの隙間から店内へ流れ込んでくる。革手袋越しに、暁人はポケットに入った車のキーをもてあそぶ。
「それじゃあ俺が死んだらどうするよ」
「きっと一緒に死ぬので安心してくださいね」
 間髪入れずにそう言って彼女は笑った。桃はこの店のオートマトンのどれよりも付き合いは長かったが、彼女が笑うのはとてもめずらしかった。古い人形で、パーツの取り替えもたいしてしていなかったから手首や指の球体関節はむき出しだった。それでもマリウスの髪に指を入れて髪を梳く仕草は、母が子どもをあやすそれと酷く似ていた。
「主人のいなくなったオートマトンのかなしみなんて、あなたには分かるはずもありませんよ。それが分かったら、さっさとレテを迎えに行ってあげてくださいね。この店のオートマトンはみなわたしの兄弟なんですから」と慈愛にみちた微笑みで、桃は暁人を送り出した。

 

UTAUおすすめ曲

UTAUってなんじゃらほいという方はまずこの曲を聞いてみてほしい。

これ、ひとが歌っているんじゃなくて、音声合成ツール(UTAU)で作られているんですよ。あ、い、う、え、お、等々もとの音源は肉声だけれども、それを組み合せて曲を作っていくのがこのUTAUなんです。

とりあえずミクちゃんみたいなもの、という認識でいいのかな。ボーカロイドの他にもこういうものがあるんだよー、好きなUTAUを見つけてほしいなー、そしてあわよくば私におすすめしてほしいよー、というわけで手始めに私のおすすめの曲を貼っていこうと思います。

 

・1曲目

ボーカルは雪歌ユフでした。私の推しです。コーラスは揺歌サユ。このふたりは「雪パンダ」というコンビ名で知られていたりします。
ユフは静かな曲調が好きな方におすすめかもしれません。

・2曲目

二曲目もユフさんでした。えへへ。雰囲気ぜんぜんちがうでしょ。フルバージョンはCDの方に収録されていますので気になった方はさっそくぽちっと。

・3曲目

カバーもあるよー!この方はカバーをたくさん出しているのでぜひチェックしてみてね!

・4曲目

こういうカバーもあるぞー!

・5曲目

「君は実に馬鹿だな」でおなじみの重音テトさんです。歌詞がなかなかかっこよくて好き。

・6曲目

モデルもたくさんかわいいのが出ているので、この子かわいいなー!から入っても楽しいと思います。UTAUっていったいどんくらいいるのよと気になった方は下のリンクをぽちっとな。

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